シンプルなカラダづくりを考える

中医×探究思考÷畑で過ごす日々

東南アジアで人道支援活動を続けるジャパンハート・吉岡秀人医師

ミャンマーを中心に、東南アジアで人道支援活動を続けるジャパンハート・吉岡秀人医師。20年間、計1万人以上の子どもたちを救い続けてきた同氏ですが、かつて「難病の子ども」に対する医療方針について究極の選択を迫られることがありました。重病を患う子どもに対し、親や医師はどのように立ち向かうべきなのでしょうか?(IVS 2014 Springより)

http://logmi.jp/21033



《文中後半より》
でも、今もう命が切れようとする瞬間、心電図がピーッとのびていって、血圧もふれなくなって、ほとんどゼロになったときに僕は「しまった」と思ったんです。なんで「しまった」と思ったかというと、この子はもう充分家族に感謝しているし、幸せだったと思う。だけど、この家族がまだ救われていない、と思ったんです。

最後助けてあげたかったのに、またこんなふうになって、本当に家族が、このあと家族が救われていなかったと思ったんです。そのとき僕は、看護婦さんたちにこういったんです。「ちょっと心電図止めてほしい」と。ほとんど心臓止まっていたと思うんですけれども、「もう心電図止めてくれないか」と、外させたんですね。

人間というのは心臓が止まったあと、脳が死んでいきますね。やがて血流が途絶えて、脳がどんどん死んでいって、最後に残るのは聴覚だと言われているんです。ビルマ人、ミャンマー人たちは仏教の国で、生まれ変わりというのを本当に信じているんです。人間は生まれ変わってくると。だから死者に対する未練なんてないんです。また生まれ変わるからですね。

その時に僕は家族に向かって、こう言ったんです。「この子は、おそらくみんなに感謝しています。日本でもこんなに生きられる子どもは少ないです。皆さんが本当にこの子のことを大切にしてくれたから、この子は本当に感謝してると思います。だけど、この子はこの命で十分健康に生きられなかった、だから皆さんにお願いがあるんです」と言ったんです。

「ぜひこの子が次生まれてくるときは、今度は元気に、そして長い長い寿命で生きられるように、皆さんでこの子のために、最後にこの子を囲んでお経を上げてくれませんか」と。ミャンマー仏教の国ですから、お経を上げてくれませんかと言ったんです。